ここは退屈迎えに来て

ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)
山内 マリコ
幻冬舎 (2014-04-10)
売り上げランキング: 5,787

面白かった
田舎で暮らす人々が閉塞した鬱屈感から「誰かに連れ出してもらう」ことを望んで、もがいて、ここではないどこかへ行きたいと願う話。物語のキーとなるのは小学校の時のスターだった「椎名くん」。ただし椎名くんは主人公ではないし、椎名くん目線の話も一つもない。椎名くんとガッツリとは関わっておらず、身内もいるにはいるが、椎名くんに憧れたり眺めている作品だ。スクールカースト1位の、クラスに一人はいるモテる男子みたいな子が椎名くんだけど、他者評価ばかりで実際はどういう子かよくわからない。というか1話目からしょぼくれた大人からスタートした。学生時代はキラキラだったけど、普通の人になっちゃったし、キラキラ時代を知らない婚活に疲れた女の子と結婚したし。そんなありふれたリアルさが実に淡々と描かれていた。リアルだけどふわふわみんな何処かに救いを求めていて、だれかがここから連れ去ってくれるのではないかという無理な期待で、受動的な印象を受けた。ある種脳内彼氏的な椎名くんなら救ってくれるんじゃないかな。。。みたいな。鬱屈してた。特にリアルなのは婚活疲れと16歳で処女を脱したい話かな〜。めっちゃわかるわかるでした。読んでて、話変わってない?テーマから逸脱してない?とも思ってたけど最も「ここは退屈迎えに来て」感があった。[16歳はセックスの齢]は最終話でしたが、性に興味があるあまりエロい夢を見ようとして夢日記を書いて夢と現実の区別がつかずついに昏睡してしまうというサスペンスチックな話で、え?これ大丈夫?とか思って、そのまま死んでしまうのかと思ったけど、奇跡的に生き返り、16歳ではなかったけど無事処女も捨てれたというw
なんだかいちいちリアルだったな。私は都会っ子だから東京への強い憧れはないんだけど、田舎に生まれていたら無駄に東京への羨望があったと思う。そして、20代前半までは、変化を恐れまくっていてでも誰かに救ってほしいという願望を込め脳内彼氏の椎名くんがいた。20代も半ばをすぎると色々嫌なことやショックなこと、信じていたけど裏切られるようなこともいっぱい経験するからね、だから野心とか、そういうの、諦めちゃうんだよね。悲しいけどね。それが老け込むことなんだよね。
誰か王子様がいきなりきて眠っているところを起こしてほしい
そんな受動的なプリンセス的発想が「ここは退屈 迎えにきて」だった。